光を求めて

 

 

 

非常勤講師の柳井嗣雄先生の個展です。

 

『光を求めて』

2018年10月20日(土)〜11月25日(日)

開廊日 金、土、日

13:00〜19:00

 

オープニング、アーティストトーク

初日 10月20(土)17:00〜

 

POLARIS The Art Stage

〒247-0061

鎌倉市台1752-10

TEL/0467-45-2336

 

「光を求めて」  

 

飯能のアトリエの裏で私は楮を栽培している。言うまでもなく楮は和紙の原料にする。毎年冬場に刈り取り、翌年にはまた3mぐらい成長している。同時に元の切り株とは離れた思いもよらぬ場所からもひょっこり新芽が出て来たりする。きっとこの地面の下では縦横無尽に根がネットワークのように張り巡らされているのだろうと想像してみる。

根茎は光を求めて地表から発芽し、自らの地中の世界と地上という未来の空間を結び付けようとする。このことは胎児が母体から離れ、全く異なった空間に放り出されるような環境の変化に晒されるということに他ならない。新たな息吹はしかし、確実に過去の記憶と膨大な時間的空間をDNAの中に隠し持って母体と繋がっている。

一方で環境の変化とは成長のために与えられた試練でもある。そのため植物は容易に枯れたり、根腐れを起こす。「光を求めて」とはつまり、リスクを負いながら自分とは別の世界と関係を築こうとする生命の根源的な意志であり、また生と死を隣り合わせで考えなければならないという宿命的な覚悟でもある。自然界で進行するこの小さな生の営みから、私たちが普段意識していない時空を超えた人間と自然と生命の関係が見えてくるのではないか。私は、天と地、内と外を繋ぐ見えない糸、あるいは光と影を分かつ見えない境界を可視化しようとしているのだ。

今回は2つのインスタレーションを展示する。「根茎」シリーズでは、大きな生の営みを、「スケルトン」シリーズでは、生と死の姿をテーマとする。いずれ大地に戻っていく私たち現代人の記憶と未来が作品の中に宿ることを願って。